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烏賊の塩辛が見に行った映画や展覧会の感想など、日々感じたことを徒然に書いていきます。


by ika-no-shiokara
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本牧ジャズ祭

本牧市民公園で行われた本牧ジャズ祭に行った。

去年初めて聴きに行ったので、今年で2回目。くつろいだ雰囲気で、観客がバーベキューの道具を持参して調理することも許されている楽しいイベントだ。去年は体調があまりよくなかったので途中で帰ったが、今年は最後までつきあうことができた。

本牧市民公園はかつての海岸だったであろう切り立った海食崖と産業道路(そしてその上を走っている首都高速)に挟まれた公園で、海岸を埋め立てた時に住民への償いに建設したプールセンターも併設している。去年は海食崖側に舞台を設営してあったが、今年は雨の可能性があったため海側に設営したようだ。ただ、舞台の後ろに首都高速が聳え、ひっきりなしに車が行きかう様はちょっとシュールな感じだ。

JR根岸駅からバスで公園に着いたときにはトップバッターの東京ブラススタイルの演奏が終わろうとするところだった。去年デビューしたばかりのグループのようだが、大勢の若い女性メンバーが良く知られた曲を元気良く演奏していた。聞き逃して少し惜しい気がした。

早速生ビールを購入し、飲みながら次の演奏を待つ。と、2番手は仲道英明オバタラ(どういう意味なのだろう。オバタリアンを連想するが?)だった。こちらはラテンの乗りで、舞台前に集結した踊り好きたちが早速踊り始める。ビールの酔いが早くも回って来ていい心持だ。芝生に寝そべりながら聴けるのもこのイベントの気楽なところだ。

3番手の太田剣"Swingroove"は、昨年Verveレーベルからメジャーデビューした太田のグループ。始めはちょっと硬さが感じられたが徐々にリラックスしてきて、最後は盛り上がった。

休憩をはさんだ後半トップは女性4重唱のグループSuite Voiceだ。マンハッタン・トランスファー調の曲だなと思って聴いていたら、マン・トラのアレンジャーに頼んでアレンジしてもらったとのこと。中々楽しい演奏で、このグループだけ30分の持ち時間しか与えられていないというのは惜しい気がする。

次のMusic of SFKUaNKは、何か訳のわからない大勢の軍団が吹きまくったと言う感じ。BBBBというブラスグループを前面に出して、ひたすら乗りまくる。舞台が終わっても会場で聖者の更新を吹きながら行進していた。元気の塊みたいな人々だ。

何といっても素晴らしかったのはトリのバカボン鈴木SESSION。最初にバカボン鈴木がベースでいきなりソロで盛り上がる。他のメンバー達は大喜びでそれを聞いている。そこからメンバーが交代でソロを受け持つ。どれも素晴らしい演奏だったが、SAXの本田雅人やギターの増崎孝司の素晴らしいテクニックには息を呑んだ。と、スペシャルゲストとして登場した坂田明が、民謡を歌い始めた。なんだなんだと思っていたら、SAXで狂ったような演奏を始めた。いやぁ、今年も本牧に着て良かった。また来年も来るぞ!と感じさせられた。

会場で横浜JAZZフェスティバルのチケットを1割引で販売していたので、思わず購入した。今年はスケジュールが合わなくて終日参加できないので、行かないつもりだったのだが。やっぱり行かないわけにはいかないでしょう。
# by ika-no-shiokara | 2006-08-29 00:02 | ジャズ
下北沢の本多劇場で加藤健一事務所の音楽劇「詩人の恋」を見た。

この劇は、加藤健一と畠中洋の2名しか登場人物が登場しない。先日来1人芝居づいていた筆者。1人芝居を2つ見た次は2人芝居である。というわけではないが、「詩人の恋」(明らかにシューマンの有名な歌曲集の名)という題名に惹かれてチケットを購入した。実際、シューマンの作品が演奏され、芝居の縦軸となっているのだが、音楽の持つ力の素晴らしさを感じさせる素晴らしい芝居だった。

舞台は1986年のウィーン。へたくそなピアノでシューマンの「詩人の恋」を練習している声楽家のマシュカン教授。そこに1年前に演奏活動に行き詰ってしまったアメリカ生まれの(かつての)天才ピアニストのスティーブンが訪ねてくる。彼はピアニストとして立ち直るためにウィーンを訪ね、マシュカンを紹介されたのだ。だが、マシュカンはピアニストであるスティーブンに「詩人の恋」を歌うことを要求する。スティーブンは反発するが、いやいや練習を重ねる中で、マシュカンの意図を次第に理解していく。今まで自分の演奏は誰かのものまねをしているのに過ぎなかった。自分の内面から湧き出す感情を表現することの楽しさを知らなかったということにスティーブンは気づく。

実はスティーブンの渡欧にはもう1つの目的があった。彼はユダヤ人で、父親から渡欧費用を工面してもらった際に、ミュンヘン近郊にあるダッハウ強制収容所を訪れる約束をしていたのだ。ダッハウ訪問によりすっかりドイツ人嫌いになってしまったスティーブンは、ウィーンに戻ってからシューマンをドイツ語で歌うことを拒否する。マシュカンのもとを去ろうとするスティーブンに、マシュカンは黙って右手のシャツの袖をまくって見せる。そこには、大きな数字の刺青があった。マシュカンもユダヤ人で、強制収容所に入れられていたのだった。彼にとっては収容所時代のいやな思い出が生涯のくびきだった。何度も自殺未遂を繰り返していたマシュカンは、このやりとりの晩にもう一度自殺未遂を起こし、スティーブンに助けられる。

そんなやりとりの中で、2人は友情を深めていく。レッスンの期間が終わり別れの時が来るが、2人の間には友情と信頼の絆ができていた。

シリアスなテーマの中に、時に笑いをちりばめた、素敵な芝居だ。ジョン・マランスというアメリカの劇作家の作品で、各国で人気上演中という。何といっても、シューマンの「詩人の恋」という素晴らしい作品が芝居の各所で歌われ、芝居の縦軸となっているところが魅力的だ。加藤健一は、この作品のために声楽のレッスンを何年も重ねてきたという。発声も本格的だ。シューマンが歌えて芝居もできる役者が他に何人いるだろうか?スティーブン役の畠中洋も(ミュージカル役者出身なので発声法に少し違和感があったが)素晴らしい。

先週はパウル・クレーの美術の中に音楽を聴いた。今週は演劇の中で演奏される音楽を聴いた。いろいろな音楽の楽しみ方があるのだなぁと感じ入った。家には確かフィッシャーディスカウのCDがあったはずだ。久し振りに聴いてみよう。
# by ika-no-shiokara | 2006-08-27 01:52 | 演劇/ダンス
川村美術館でパウル・クレー展を見た。

前から気にかけていたのだが、8/20のパウル・クレー展の最終日にぎりぎり駆け込んだ。
川村美術館は2年前にピカソ展をやっていた時に初めて行った。JRまたは京成佐倉駅から送迎バスで20~30分程のところにあるこの美術館は、お世辞にも便利な場所にあるとは言いがたい。筆者の自宅からは片道で約3時間の大旅行になる。だが、送迎バスを降りてあのヨーロッパの古城風の建物と白鳥が泳ぐ池を見た瞬間に、ああまた来てよかったと思った。

「佐倉の真珠」。筆者は密かにこの美術館をそう呼んでいる。美術館は小さいけれど、豊かな自然環境に囲まれた素晴らしい場所にある。大日本インキの創業者一族が集めた美術コレクションも素晴らしい。また、2年前に見たピカソ展といい、今回のパウル・クレー展といい、見所満載の素晴らしい展覧会だった。

パウル・クレーは昔ニューヨークに行ったときに初めて実物を見て、作品の小ささに驚いた記憶がある。小さなその作品は、だが確かに小宇宙を構築していた。
今回の展覧会では、ドイツの3つの美術館や国内のコレクションを集め、パウル・クレーのいろいろな側面を紹介してくれている。昔筆者がその小ささに驚いた水彩画と同じような作品もあるし、もっと大きなものもある。エッチングの風刺画もあったりして、楽しい。
音楽家の一家に生まれたクレーは自身もプロ級のバイオリン奏者だった。彼の作品から音楽のリズムを感じることもできる。だが、彼の好んだ音楽はバッハやモーツァルトで、アーノルト・シェーンベルクのような音楽はあまり好みではなかったと言う。前衛的なクレーの作品から見ると意外な気がする。

川村美術館を見た後、せっかく佐倉に来たからということで国立歴史民俗博物館にも足を運んでみた。ちょうど「佐倉連隊にみる戦争の時代」という特別展をやっていて、この博物館の所在する佐倉城址に歩兵第2連隊・第57連隊が置かれていたときの発掘物や、その他史料が展示されており、ちょうど学芸員の方の解説も聞くことが出来た。常設展では、江戸時代の展示が2008年まで展示替えのため閉鎖中だったのが残念だった。また2年後に行ってみたいと思った。
# by ika-no-shiokara | 2006-08-20 22:41 | 美術

<狐>が選んだ入門書

ちくま新書「<狐>が選んだ入門書」(山村修著)を読んだ。

本書は「日刊ゲンダイ」に<狐>のペンネームで22年に渡り書評を書き続けて来た山村修氏が、サラリーマン生活をやめて本名で書いた著書。
ここで言う「入門書」とは一般の読者向けに平易に書かれた本ではあるが、何か高みにあるものを目指すための助けとして、階段として書かれたもの(手引書)ではない。そうではなくてそれ自体が一個の作品であり、思いがけない発見に満ちた魅力ある書物のことだと著者は定義する。
例えば、三好達治「詩を読む人のために」では人口に膾炙した島崎藤村の「千曲川旅情の歌」を取り上げているが、誰もが知っているこの詩を著者の斬新な切り口で解釈することにより読者を魅了する。若桑みどり「イメージを読む」も、モナリザという誰もが知っている名画を題材に選びながら、陳腐な解釈に終わることなく読者をはっとさせるようなみずみずしい解釈を与えている。
この2冊は私も以前に読んだことがあり、山村氏の説明にわが意を得た気がする。本書では各分野合わせて25冊の<入門書>が紹介されているが、この2冊から類推してきっといずれも魅力的な物だろうと思わせる。
それに山村氏の語り口もよい。山村氏は、それぞれの<入門書>をとても楽しく紹介している。淀川長治が映画の話をするときのように、紹介する本のよいところを紹介するのが楽しくて仕方が無いという風だ。本書自体が著者の定義する<入門書>の条件に合致した、魅力的な読み物になっていると思う。

本書のあとがきで著者は「世の職業人でいちばん自由に読書ができるのは、もしかすると研究者でもなく、評論家でもなく、勤め人かもしれない。」と一見逆説的なことを書いている。近代日本文学者が自分の専門の作家以外の作家の作品を読む時間がない、という例が紹介されているが、なるほどそうかもしれない。私も「一番好きなことは仕事にするな」と聞いてサラリーマンになった口だが、読書をするのに何の義務も負わなくてよい立場だ。(尤も仕事に関する本についてはそうはいかないが。)サラリーマンは確かに拘束時間が長いが、経済的な安定を得てしまえば、逆に残された時間は自分の好き放題に読書に充てることができるかもしれない。
正直言うと、週末に自由な時間があっても平日の仕事の疲れを取るためにそれほど自由に読書をする意欲も余裕も出てこないのが現実だが、本書のような魅力的な<入門書>にぶち当たってしまうと、本の魅力に貴重な余暇の時間を割いても惜しくないように感じた。
# by ika-no-shiokara | 2006-08-07 23:43 | その他
池上本門寺で行われたSlow Music Slow LIVE '06に行って来た。7/22~23の2日間行われた内の7/23の方を聴いた。

東急池上線ののどかな電車に久し振りに乗って、池上駅で降りた。本門寺までの通りではちょうど夏祭りだったらしく、子供達が神輿を牽いていた。人の波をかきわけてようやく池上本門寺の山門までたどりついたが、境内は静かでとてもコンサートの雰囲気ではない。やっとSlow Music Slow LIVE '06の看板を持ったスタッフを見つけ安心する。境内横のコンサート会場に着いたときにはオープニングアクトの中孝介(あたりこうすけ)の最初の歌が始まったところだった。

種子島出身の若々しい島歌の後には、プログラムには載っていなかったがペペチオの2人組の朗らかな演奏が続く。次のアン・サリーはアコースティックギターを伴奏にスタンダードナンバーを訥々と歌う。まさにSlow Musicという感じ。本門寺の会場は梅雨の雨空に覆われていたが、何とか雨が降らずに持っていた。逆に真夏の暑さに苦しむこともなく、のんびりした雰囲気が心地よかった。

だが、ここから舞台が俄然盛り上がる。Monday満ちるのステージは、彼女の歌唱力とトランペットの夫君の力強い演奏が共鳴してエネルギッシュに展開された。彼女はジャズピアニストの穐吉敏子の娘だとか。去年横浜ジャズフェスティバルで母君の素晴らしいピアノ演奏を堪能したが、娘の彼女のヴォーカルも素晴らしい。(どうも筆者と同い年のようだ。美しい彼女はもっと大分若く見える。)
次にゴンチチが登場。実はこのチケットを買ったのは生ゴンチチが見たかったからなのだ。純白の揃いのスーツに真っ赤なギターを抱えてゴンチチの2人が登場。丁寧な標準語に時折関西弁を交えた語りはいつもNHK FMで聴いている調子。ゴンザレス三上氏の引退後に喫茶店を作る話や、ムシがチチ松村氏の腕に止まって離れなかったりするハプニングなど、のどか(?)な語りとは対照的に、演奏はエネルギッシュそのもの。

トリを勤めたのが吉田美奈子&河合代介 feat. 渡辺香津美。吉田の歌唱力・表現力は群を抜いている。河合代介のオルガンも魅力的。渡辺香津美のギターはさすが。圧倒的な演奏に、夜も更けてきた会場は盛り上がった。会場の後ろでは本門寺の五重塔がライトアップされ、厳かな雰囲気を醸し出していた。

池上本門寺では、寺院に篭って修行するばかりが宗教の役割ではなく、社会に積極的に参加すべきだとの考えから、このライブコンサートに毎年会場を提供しているという。また、ゴミ拾いのボランティア団体が2つ参加して、会場のクリーンアップと活動のアピールを行っていた。会場で販売していたSlow Foodは残念ながら食べられなかったが、また機会があれば食べてみたい。
# by ika-no-shiokara | 2006-07-23 23:57 | 邦楽