烏賊の塩辛が見に行った映画や展覧会の感想など、日々感じたことを徒然に書いていきます。


by ika-no-shiokara
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カテゴリ:映画( 5 )

胡同のひまわり

Bunkamura LE CINAMAで映画「胡同(フートン)のひまわり」を見た。

胡同(フートン)というのは、北京の伝統的な路地・横町のこと。元々今の北京が元王朝の首都になった際、碁盤の目状の街並みの中を細かく路地に割った時からのもののようだ。フートンというモンゴル語に漢字を充てているという。

この映画の主人公シアンヤン(父親が中国語でひまわりという意味のこの名前を付けた)はこの胡同で生まれ育った。(だから胡同のひまわり)この映画を作ったチャン・ヤン監督もシアンヤンと同じ1967年に胡同で生まれ、映画のディテールは監督自身の経験が多く反映しているという。決して自伝ではないと言うが、監督の父親も映画監督で、画家の父との葛藤の末に結局画家になってしまうシアンヤンは監督自身の反映なのだろう。
文革時代に6年間も農村に下放に出され、その間に画家として一番大切な手の指を駄目にされ、画家としての生活を諦めざるを得なかった父。シアンヤンが9歳の時父は胡同に帰ってくるが、シアンヤンは父の記憶もなく、なつかない。父は、この時息子のために生きようと密かに心に誓う。ただ、父として振舞うにはどうすればよいか術を知らず、ことある毎に息子に厳しく当たる。そんな父親に反発するシアンヤン。

父と子の葛藤は、昔から様々に描かれてきたが、決して語りつくされることはないだろう。私自身、28歳の時父親を癌で亡くしているが、この映画で改めて父と自分との思い出を噛みしめた。この映画のような葛藤は無かったが、父の人生と自分のそれを重ね合わせて思いはつきない。映画を見ているうちに、そんな思いに瞼が熱くなった。

映画ではいろいろなエピソードが続いた後、32歳になったシアンヤンが画家として成功するのを見届けた父が、「これからは自分のために生きる」とテープにメッセージを残したまま、家族の前から姿を消してしまう。子供を持つことに躊躇していたシアンヤンがようやく子供を作ることを決心し、息子が生まれる。あんなに父に反発していたシアンヤンだったが、結局父と同じ画家になり、彼の展覧会の作品も父と自分をテーマにしたものだった。最後に彼自身が父親となって映画は終わる。歴史は繰り返すのか。父は自らの役割を終え、存在意義が無くなる。ただ、それならば物語上は父を病死させても良かったかもしれないが、そうではなく失踪させたのは、父に新しい希望の道を歩んで欲しいという願いからか。

父と子の葛藤。画家仲間の隣人との友情と裏切り。胡同で暮らす人々の人情味深い生活。そして経済発展とともに胡同が取り壊されていく風景。いろいろな要素がうまく組み合わされている味わい深い映画だった。
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by ika-no-shiokara | 2006-07-23 23:03 | 映画
DVDで映画「ベルリンフィルと子供たち」を見た。

この映画は、ベルリン・フィルが2003年のシーズンに行った教育プログラムー「春の祭典」をベルリンの子供たちのダンスと競演するーを記録したドキュメンタリー。
ベルリン・フィルが音楽総監督兼主席指揮者にサイモン・ラトルを選ぶとともに「21世紀のオーケストラ」を目指すために始めたのが、この教育プログラム。ベルリンに住む様々な社会的階層、人種の8歳から高校生までの子供たちを集めて、ストラヴィンスキーの「春の祭典」を踊らせようというもの。予想される通り、彼らはダンスの経験もなく、クラシック音楽も聴いたことが無い。多くの子供たちは言葉は悪いが社会の底辺で自信を無くして無気力な日々を過ごしている。そんな彼らにダンスを指導するのが振付師のロイストン・マルドゥーム氏。ロイストンは、子供たちに集中することを教え、ダンスを通じて人生を変えることができると説く。始めは子供たちだけでなく学校の教師たちもロイストンの指導に反発したり当惑するが、次第に子供たちがやる気と自信を持っていくことに気づく。
最後にベルリン・アリーナでの公演が成功裏に終わると、子供たちは達成感を胸に新たな人生を踏み出していく。

この映画に描かれているのは全て実話だけに、とても感動的だ。それにしても、世界最高のオーケストラであるベルリン・フィルが現状に決して満足せず「21世紀のオーケストラ」として生まれ変わることを望み、その実現手段としてこのような教育プログラムを選んだのはとても興味深い。この教育プログラムは決して子供たちのためだけに行っているのではなく、ベルリン・フィル自らが生まれ変わるために行っているのだ。子供たちを指導していたのはロイストン達振付師だけではなく、ベルリン・フィルのメンバー達も彼らに音楽的な指導を行った。(DVDに付属しているメイキング・ムービーには、バイオリニストやパーカッショニスト達が子供達を指導している映像が収録されている。)子供達を教えることを通じて、ベルリン・フィルの演奏家達も音楽の持つパワー、何かを作り上げることのすばらしさを確実に子供達から教えられたように思う。
ベルリンの置かれている経済状況は厳しく、ベルリン・フィルと雖も将来を安閑としていられないという事情もあるようだ。だが、その根底には「芸術は何のためにあるのか?」「芸術は苦しんでいる隣人に対して何の力があるのか?」という普遍的な問いがある。サイモン・ラトルは言う。「音楽は贅沢品では決して無い。食べ物のように、生きていくために必要なものなんだ。」
この言葉は十分過ぎるほどの説得力を持ってこの映画の観客にアピールしたと思う。そして、この映画を見た誰もが、自分ができることは何だろうと思って劇場を後にしたのではないだろうか。
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by ika-no-shiokara | 2006-02-26 17:12 | 映画

THE有頂天ホテル

話題の映画「THE有頂天ホテル」を見てきた。

三谷幸喜の映画は「ラジオの時間」「みんなのいえ」ともDVDで見ていたので、今度はぜひ劇場で見たいと思って期待して見に行ったが、期待通りの作品だったと思う。
登場人物が入れ替わり立ち代わり出てきて、たくさんのエピソードが順に繰り広げられるのだけれど、それがうまくまとまって2時間余りの上映時間があっという間に終わってしまった感じだ。笑いのつぼもうまくちりばめてあり、観客が飽きそうにならない絶妙なタイミングで笑いをとるようになっているようだ。映画館で周りの反応を見ているとそう思う。
それにしても芸達者な役者をよくもここまで集めたものだ。役所広司、戸田恵子、伊藤四朗、西田敏行など豪華な顔ぶれ。松たか子、麻生久美子、篠原良子ときれいどころも揃っている。
DVDで見るのもよいが、やはりこれは劇場で回りの観客とともに楽しむべきだろう。まだ見ていない方には劇場にいく価値は十分ありますよと言っておこう。
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by ika-no-shiokara | 2006-01-29 23:46 | 映画

ALWAYS三丁目の夕日

映画「ALWAYS三丁目の夕日」を東急シネマズMM21で見てきた。

c0023633_10495662.jpgどうせ邦画だからまた空いているんだろうと思って映画館に入ったらとんでもなく混んでいた。みんなこういうのが意外に好きなのかな?僕はCGで昭和33年の東京が見られるのを期待して見に行っただけなんだけど。原作はビッグコミックオリジナルで連載しているあの漫画なんでしょ。お涙頂戴の筋書きがみえみえじゃん。(と思って映画館に行ったのだが。)

CGやセットは期待以上のできばえ。建設途中の東京タワーが見える夕日町商店街。道路もまだ舗装されておらずオート三輪が人をかきわけて通っている。蒸気機関車に揺られて集団就職の子供たちが降り立つ上野駅。都電からみえる街並みもいい。自分は昭和38年生まれで映画の舞台となった昭和33年当時のことを知る由もないが、不思議と懐かしさを覚える。自分の子供の頃(昭和40年代前半)でも道路は舗装されていなかったし、駄菓子やも残っていたから、半分は自分の思い出にオーバーラップするところもあるからか。昭和33年という設定は、東京タワーができた年ということだろうけれど、横浜ラーメン博物館の地下の街並みも昭和33年だったはず。(こちらは確か最初にインスタントラーメンが発売された年だったから。)不思議な一致だけれど、日本が戦後の混乱期を終えて高度成長時代に突入する直前の、人々が貧しいけれど希望を持ち始めた年で、人々の思い出に留められているのかもしれない。

いつしか映画にひきつけられ涙腺が熱くなってきたのは、自分も日本人だからなのだろうか?筋がみえみえなのに。堤真一の「鈴木オート」、吉岡秀隆の「文学」の演技が良かった?うん、そうだね。吉岡は「Drコトー」や「半落ち」とは全然違うキャラクターだが(良い意味で)「くさく」演じているのはいつもと同じか。やっぱりうまいよね。堤真一が怒って「ゴジラ」のように大暴れするところ、その後テレながら六ちゃんに謝るところもよかった。
あと、堀北真希もかわいかったし小雪もきれいだったね。(みんな言っているように、あんなにスタイルの良い日本人が当時居たとは思えないけれど。)

「オリジナル」連載作品映画化の先輩である「釣りバカ日誌」のように、「三丁目の夕日」もシリーズ化できないだろうか。「鈴木オート」や「文学」のキャラクターは十分魅力的で、いろんな話が展開できそうだ。(原作にこだわらず。)釣りバカに匹敵する日本映画の人気シリーズになれると思う。
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by ika-no-shiokara | 2005-11-26 23:59 | 映画
TSUTAYAで「リバー・ランズ・スル・イット」という映画のDVDを借りてきて見た。

パッケージを見てモンタナ州の美しい自然を楽しめることに期待して借りたのだが、美しい山河を堪能できたのは勿論、ドラマとしてもなかなかのできだったと思う。

モンタナの大自然の中で牧師の父に教えられた釣りに明け暮れながら育った2人の兄弟。弟は地元の大学を卒業するやジャーナリストになり、釣りの腕も父を凌ぐほどになる。兄は東部の名門大学を6年かけて卒業して故郷に帰ってくる。久し振りに再会した兄弟は、子供の頃と同じように父とともに釣りに行くが、大人になった兄弟の行く路ははっきり分かれてしまった。兄は自分が退屈な人間なのに比べて弟が天衣無縫な性格で釣りの道も究めてしまったことで、愛する弟ではあるが同時に妬ましい気持ちも抱く。弟もまた、飲んだ暮れの自分に比べ学問の道を進んでいく兄にコンプレックスを感じる。兄は大学教授のポストを得るが、弟は喧嘩や賭博にあけくれ、最後には喧嘩で命を落としてしまう。悲しい結末ではあるが、弟は父をして「それだけじゃない、あの子は美しかった。」と言わしめる。

モンタナ州ってどこにあるんだろうと思って調べたら、アメリカ北西部のカナダ国境付近にあり、面積は日本全体に匹敵するという。ロッキー山脈などのある自然の豊かな土地らしい。映画でインディアンへの人種差別が描かれていたのも土地柄か。
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by ika-no-shiokara | 2005-11-26 17:54 | 映画