烏賊の塩辛が見に行った映画や展覧会の感想など、日々感じたことを徒然に書いていきます。


by ika-no-shiokara
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神奈川県立公文書館で開かれた古文書解読講座を受けてきた。

先日の記事に書いたように、この春から古文書の勉強を始めている。二俣川にある神奈川県立公文書館で古文書解読講座を開くという話を聞き、ちょうど勉強の良い機会だと思い、さっそく参加した。講座は毎日曜日に2時間半の講義を3回行うもの。100名の募集に約140名の応募があったようだが、絞込みをせず全員聴講を許したため、大会議室が満員の盛況となった。

第1回は東大史料編纂所の佐藤教授により、駆込寺と縁切り寺に関する史料を読んだ。駆込寺と言えば鎌倉の東慶寺が有名だが、東慶寺でなくても江戸時代に様々な理由で寺社に駆け込むことがあったと言う。離婚のために寺社に駆け込むというだけでなく、懲罰の一環として寺に入らせられることもあった。佐藤教授は古文書をどんどん読み進んでいき、ついていくのがやっとだ。最後にまとめとして説明されたのは、中世にアジールとして存在した寺社(網野義彦「無縁・苦界・楽」)の性格が織豊政権を経て解体し江戸時代を迎えるが、江戸時代でもアジールとしての側面が形を変えて縁切り寺のような形で現われた、という。

第2回は江戸東京博物館館長の竹内誠氏。幕末に焦点を当て、孝明天皇が徳川家茂に宛てた手紙や、紀州藩士が開港したばかりの横浜を訪れた時の日記を読んだ。竹内先生の話はとにかく面白い。先生は東京生まれの東京育ちで「ひ」と「し」の区別がつかないが親が田舎出身なので江戸っ子ではないという。べらんめい調でほとんど脱線ばかりする講義だが、その脱線が面白い。館長として天皇陛下や皇太子一家を案内した時の話など、「ここでしか聞けない話」をいろいろ聞けた。古文書については基礎的なことも丁寧に解説していただいたので初学者の筆者にはとてもよかった。

第3回は池上裕子成蹊大教授。戦国時代が専門の先生で、神奈川県にちなんで後北条氏が豊臣秀吉に滅ぼされたころの古文書を読んだ。古文書を丁寧に読み進んでいき、古文書講座としてはこの回が一番オーソドックスな講義のように思った。もし北条氏政が秀吉に早く恭順していたら歴史はどうなっただろう。家康が江戸に封ぜられることも無く、もしかしたら日本の都はまだ京都だったかもしれない。古文書は私達にいろいろなことを教えてくれ、いろいろなことを考えさせる。それにしても、もっと勉強しないと古文書をすらすら読み進むには程遠い状態。がんばらねば!
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by ika-no-shiokara | 2006-10-31 23:51 | 歴史

悠久の聲

ドックヤードガーデンで行われた「悠久の聲-高野山・比叡山の声明-」に行って来た。

以前から声明を聴いて見たいと思っていたが、横浜で、しかも高野山・比叡山の声明が一度に聴けるとのことで期待して行った。当日の新聞にも前日のリハーサルの様子が記事になっており、注目度も高いようだった。

ドックヤードガーデンは、旧日本船渠(三菱重工横浜造船所の前身)の第2号ドックを保存・活用した施設で、ミニコンサートなどの小イベントを時々やっているが、こんな大イベントを行うのは珍しいのではないか。(有料のコンサートでも外から聞けちゃうしね。)開国後の日本の躍進を象徴する近代化遺産の代表例で、重要文化財にも指定されているこの施設で、千年以上の伝統を持つ声明が唱ぜられるというのも興味深い。

さらに面白いのは、「横浜アーツコラボレーション2006」と称して、石井幹子さんの照明デザインによる演出がされたことだ。新聞記事でも大きな写真が掲載されていたが、ドックランドヤードのすぐ横の横浜ランドマークタワーの壁面に毘沙門天とマンダラ図が交互に大きく投影された。あたり一面が法要の場と化してしまうという何ともスケールの大きな話だ。

最初に比叡山延暦寺により「鎮将夜叉大法」が行われた。遠くからかすかに聞こえていた雅楽が次第に大きく聞こえてきたかと思ったら舞台後ろの階段から楽器を抱えた僧侶の列が入場。その後森川宏映師以下20名程の僧侶が入場。森川師が「ここ横浜で世界の平和を祈って法要を営む」ような主旨の話をお経を読む調子で唱える。ああ、そうか声明といっても要は仏教の法要を行っている訳で、唱えるのはお経なんだな、と自分が基本的なことに気づいていなかったことを悟る。そこから1時間程かけて「鎮将夜叉大法」が行われた。森川師が経文を唱えると、その他の僧侶達がある時は座り、ある時は立ち上がって合唱する。後でパンフレットを読むと、大導師が毘沙門天の功徳をひろく大衆に給わらんと祈願するのを周囲の式衆が応援しているのだと言う。

次に高野山の「真言声明の会」(SAMGHAというNGOを設立しているそうだ)が後方から登場。大きなシンバルを抱えた僧侶が激しい口調で唱え始める。先ほどの比叡山が静でこちらは動という印象。法螺貝を吹く僧侶を先頭にして舞台に向かって行進しながら紙のようなものを蒔いている。自席に飛んできたものを拾ってみると、少し厚めの紙を木の葉状に切ったもので、木の葉のような絵が描かれていた。
行列の最後には宮田永明師に大きな傘をかざす僧侶と2人の稚児が歩いていた。舞台につくと、「理趣三昧」が始まる。こちらは「理趣経」を読誦するもので、欲望の実相について対象のあるがままの姿を眺めることにより、なにものにも束縛されない安らかな境地に入ることを説いているそうだ。舞台に立つと、先ほどの比叡山のものとあまり変わらない感じ。というと怒られるか。こちらも約1時間の法要だった。

最後に、比叡山・高野山の僧侶が一緒に舞台に立って比叡山は「能陀羅尼」、高野山は「対揚」を行った。(一緒に同じものを行っているように見えたが、パンフレットに別々に書いてあったのでそうなのだろう。)この頃になると、寒風が舞い、あたりの独特の雰囲気に飲まれて半分感覚が無い感じ。入り口で配られたホッカイロもあまり効果は無いようだ。ちらほらと途中退座する聴衆も出始めて、どこまで続くのかと思ったころいつのまにか法要が終わった。

休憩なしの2時間半のイベントに最後はすこしばて気味ではあったが、めったに遭遇できない貴重な体験で、とても面白かった。別の機会があればまた声明を聴いてみたい。
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by ika-no-shiokara | 2006-10-15 11:39 | 邦楽
横浜ジャズプロムナードに行って来た。今年は所要で土曜日の半日分しか聴く事が出来なかったが、それでも十分楽しむことが出来た。

最初に聴いたのが井上淑彦clepsydra。ランドマークホールの場所がわからなくてちょっと迷ったが、ランドマークプラザの上の階にあった。去年横浜ジャズプロムナードでいろいろなホールに初めて入り、港の眺めがよいホールが多いことに驚いたが、ここもロビーからの眺めは素晴らしい。会場に入るともう演奏が始まっていて、佐藤芳明のアコーディオンと林正義のピアノがかけあいをやっていた。ミュージシャンたちが楽器を使っていかにも楽しそうに会話しているのを見ていて、こちらも幸福になる。去年もジャズって良いなと感じたのがこんなやりとりだった。演奏した曲も、上品な美しいもの、ちょっと変わったリズム感を楽しむものなど様々で、あっという間にステージが終わってしまった。

ランドマークホールにそのまま留まり、次の髙樹レイ・スペシャル・クインテットを聴く。髙樹レイは声量豊かに歌いまくる。うますぎてちょっと下品にならないかと感じるほど。バックバンドがすごかった。トロンボーンの向井滋春、ピアノの市川秀夫、ベースの池田芳夫、ドラムスの藤井学の名手ぞろい。なんと向井滋春のチェロ演奏まで飛び出したのにはびっくりした。

最後に関内ホールに移動し、トータル・エクスペリエンツ・ゴスペル・クワイア(TEGC)を聴く。このグループはシアトルをベースとしたゴスペル・コーラス・グループ。演奏の前にこのグループの招聘に力があったタイロン橋本氏による紹介があり、ほんとうのゴスペルを味わってくださいとの言葉に期待が高まる。TEGCが舞台に登場すると、老若男女様々のメンバーがいるのに驚く。黒人の中に白人(もしかしたら米国の基準では黒人になるのかもしれないが日本人的には白人の風貌)も混ざっているし、小学生くらいの男の子もいるし、およそプロのグループのようには見えない。TEGCのメンバーも、我々観客も、最初はお互いに緊張していたが、数曲演奏が進むにつれお互いにリラックスしてきて、ホールが盛り上がっていく。メンバーが交代でソロを務めるのでだんだんわかってきたが、今ソロを歌った18歳の女性はその2曲前にソロを歌った女性の娘だったり、まさに家族のつながりで構成されているようだ。歌は生きる喜びだとつくずく感じるひとときだった。

パンフレットの対談に書かれていたが、野毛の大道芸と横浜ジャズフェスティバルは今や横浜が全国に誇る文化的イベントとなった。何といってもすごいところは、それらが無数のボランティアに支えられて運営されていることだ。お金をかけて外国のスターを集めることは出来ても、このようなボランティア集団による市民の市民によるイベントは生半可なことでは作れまい。横浜市民として誇りに思う。

ところで、どの会場にもロコ・サトシの絵が飾られていた。彼は本牧ジャズフェスティバルでも活躍していたが、本当に横浜のカオとなった。首都圏で東京以外に文化発信のできる数少ない都市である横浜。ロコ・サトシも、他のアーチストたちも、もっともっとがんばって横浜から文化を全国に、いや全世界に発信してほしい。大げさでなく、それが世界の平和にもつながると信じた今日だった。
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by ika-no-shiokara | 2006-10-10 22:54 | ジャズ